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お茶と健康

お茶の成分で最も注目されるカテキン

健康や長寿にもつながるカテキンの機能

 カテキンは、お茶に含まれる成分の中でも特に高い注目と期待が寄せられています。カテキンの研究はここ20年程の間に急速に進んでおり、その機能は、生体レベルから遺伝子レベルに至るまで解き明かされてきています。カテキン類は、病気の予防、介護・看護や薬品への応用も広がり、食品以外の分野でも私たちの健康長寿、快適な生活をサポートすると期待されています。


○カテキンとトクホ
 お茶に含まれるカテキンは、その機能に注目して「特定保健用食品」(トクホ)にも使われています。トクホとは、「理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品」で、国の許可を得て「特定の保健の用途に資する旨」を表示できるものです。
 これまでにトクホとして許可されているのは、茶カテキンを通常より高い割合で含む茶系飲料、清涼飲料などで、茶カテキンの脂肪消費促進とコレステロール吸収抑制の働きが、それぞれ体脂肪が気になる人、コレステロールが高めの人に良いとされています。


○カテキンの主な機能
茶カテキンには、脂肪消費促進とコレステロール吸収抑制以外の機能も明らかになっています。

・抗酸化作用
 私たちの体は酸素を体に取り込み、炭水化物などの有機物を酸化して、生命活動に必要なエネルギーを取り出しています。この過程で生じる活性酸素は細胞を傷つけ、がん、動脈硬化、アルツハイマーなどさまざまな病気を引き起こす因子とされています。酸化はまた、食品の劣化や体の老化につながるとされ、健康や美容情報にもよく取り上げられています。
 食品や生体組織の酸化を抑える作用、活性酸素を除去する力を抗酸化作用と言います。茶カテキンはいずれも強い抗酸化作用を持ちますが、特にエピガロカテキンガレート(EGCG)エピガロカテキン(EGC)の抗酸化力は強力です。
 健康な生活には、カテキン類のほか、ビタミンC、ビタミンEなども含めた抗酸化物質の日常的な摂取が欠かせません。

・抗ウイルス作用
 ウイルスは生体内の生きた細胞に寄生、増殖するのが特徴です。寄生した本体にダメージを与え、インフルエンザ、AIDS、肝炎、胃腸炎など、ウイルス性の重大な病気を引き起こす場合もあります。
 カテキン類は、ウイルスの不活性化や増殖を抑える力があることが実験で確認されています。また、緑茶のカテキン類と、紅茶に含まれるテアフラビンはインフルエンザウイルスによるリスクを減らすのに有効です。お茶うがいを励行して、児童の健康維持に努める学校もあります。

・殺菌作用
 細菌などの微生物の増殖や、毒素の働きを抑える作用です。
 食中毒を引き起こすブドウ球菌、サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌O-157、伝染病を引き起こすコレラ菌、赤痢菌などが知られています。カテキン類は、これらの菌の働きを抑えることが実験で明らかになっています。
 また身近なところでは、水虫、おむつかぶれや床ずれなどにも細菌がかかわっています。症状の緩和や予防に、お茶を薄めた液に浸ける、お茶を薄めた液を浸した布で拭くなどの方法を実践している介護の現場もあります。

・抗がん作用
 がんは、ウイルス、放射線、化学物質等をきっかけに、細胞が突然変異を起こして始まります。そして、その変異が固定化され、増殖することでがんが広まります。
 カテキン類は、細胞の突然変異によるがん化と、変異した細胞の増殖や転移の両方の段階の抑制に作用することがわかっています。動物実験では、胃、小腸、十二指腸、大腸、脾臓、肝臓、乳腺、肺、皮膚などのがんに有効でした。お茶の産地では、胃がん、大腸がんなどの消化器系疾患が明らかに低いことが以前から知られており、カテキン類のがん予防への応用は熱く期待されています。

メチル化カテキンが豊富な「べにふうき」

・抗アレルギー作用
 アレルギーは、食品、花粉などの抗原(アレルゲン)が体内に入って抗体がつくられた後、再び体内に入った抗原に細胞内のヒスタミンなどが反応して、発熱、じんましん、けいれんなど体に悪い状態を引き起こすことです。気管支喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉症などが代表的な症状です。
 カテキンの中でも、エピガロカテキンガレート(EGCG)は、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制し、抗アレルギー作用があります。
 また、最近特に注目されているのが「メチル化カテキン」です。エピガロカテキンガレート(EGCG)がメチルエーテル化されたもので、腸からの吸収率が高く、血中にとどまる時間も長く、抗アレルギー作用がさらに強力です。
 チャの一種べにふうき(紅富貴)は、カテキン類、特にメチル化カテキンを豊富に含む紅茶用の品種です。生葉を酸化発酵させずに緑茶か包種茶にすると茶葉にメチル化カテキン残すことができますが、紅茶に製造するとカテキンの酸化重合により消失してしまいます。緑茶に仕上げたべにふうきを飲むと花粉症の症状が楽になると感じる人も多く、これまでの実験でも症状軽減に有効だとされています。

・消臭効果
 お茶に含まれるカテキン類は、フラボノール類、クロロフィルなどとともに、強い消臭作用が認められています。
 実際に緑茶を使って口腔清拭を行った高齢者介護施設では、高齢者の口臭が以前より気にならなくなり、口内の衛生状態も良好に保たれたそうです。何よりも、介護を受ける方にとって薬よりもやさしく、ケアに対する抵抗が少なくなったというのがうれしいですね。
 また、カテキン類の抽出物は、消臭を目的に、衣類や寝具、おむつ、石けん、脱臭剤などの日用品、ペット用品など様々に利用されています。

 このほかにも、血圧上昇抑制、血小板凝集抑制、抗動脈硬化、脳梗塞予防、血糖値調節作用、血清コレステロール低下作用、抗炎症、肝障害防止、痴呆防止、虫歯予防などの作用が研究・報告されています。
 日常的にお茶を飲んでいれば、カテキンを自然に摂取することができます。カテキンをたくさん摂ろうとしてお茶を飲みすぎると、カフェインなど他の成分でかえって体調を悪くすることがあるので注意しましょう。

カテキンは、
生活習慣病の予防につながる機能がいっぱいね!

●お茶に含まれるカテキン ~お茶の味と機能を特徴づける成分~

○お茶に含まれるカテキンの種類
 緑茶には、70種類を超えるポリフェノールが確認されています。その中でも、最も多く、お茶の特徴を作り出している成分がカテキン類です。
 茶葉に含まれる4種類の主要カテキンは、いずれも強い抗酸化作用を持っています。
※中でも、エピガロカテキンガレート(EGCG)は含有量が多く、抗酸化作用も強力です。

カテキンの種類 特徴  
エピカテキン
(EC)
無色、苦味、分子式C15H14O6
・強い抗酸化作用
・抗がん・抗菌・抗動脈硬化作用 他
・緑茶の含有割合(乾燥重量当たり)1~3%
EC
エピガロカテキン
(EGC)
無色、弱い渋味、分子式C15H14O7
・ECを上回る強い抗酸化作用
・抗がん・抗菌・抗動脈硬化作用 他
・緑茶の含有割合(乾燥重量当たり)3~6%
EGC
エピカテキンガレート
(ECG)
無色、渋味、分子式C22H18O10
・強い抗酸化作用
・抗がん・抗菌・抗動脈硬化作用 他
・緑茶の含有割合(乾燥重量当たり)3~6%
ECG
エピガロカテキンガレート(EGCG) 無色、分子式C22H18O11
・ECやEGCを上回る強い抗酸化作用
・強い収れん作用
・抗がん・抗菌・抗動脈硬化作用 他
・緑茶の含有割合(乾燥重量当たり)7~13%
EGCG

(含有割合は「緑茶の事典」より)
*緑茶飲料は、その製造途中の加熱処理で異性化したカテキンを生じ、8種類のカテキンが含まれていることがある。

お茶に含まれる主要カテキンの割合(茶葉乾燥重量当たりの割合)


カテキンが多い夏のお茶

○カテキンの生成、変化
 チャの根で作られたテアニンは、茎を上って葉に移動します。葉が日光に当たると、テアニンが分解され、カテキンへ変化します。このようなメカニズムで作られるため、カテキンは、日を多く浴びた茶に多い傾向があります。芽先よりも開いた葉に、覆いをして栽培する玉露やかぶせ茶よりも煎茶に、春先の一番茶よりも日照時間の多い夏につくられる二番茶や三番茶に多く含まれます。
 包種茶、ウーロン茶、紅茶は、緑茶と比べて全般にカテキン含有量が低めとなっています。これは、包種茶、ウーロン茶、紅茶の製造過程でチャの生葉を酸化発酵させる際に、葉に含まれるエピカテキン、エピガロカテキンが酸化重合して、テアフラビン、テアルビジンなどの縮合型タンニンに変わるからです。逆に、緑茶は生葉を酸化発酵させないため、カテキンはカテキンのまま葉に残ります。

高級なお茶よりも、普段気軽に飲むお茶にカテキンが多いなんて、カテキンはお財布にやさしいのね!

●カテキンとは? ~ポリフェノール、カテキン、タンニンの密接な関係~

 これまで見て来たように、お茶に含まれるカテキンは、渋味のもとです。「渋」と聞くと、昔から使われている言葉「タンニン」を連想する方もあるでしょうね。また近頃は「渋味はポリフェノール」という説明を見ることもあります。お茶の渋味でつながるカテキン、タンニン、ポリフェノールについて整理しましょう。

フェノール

ポリフェノール(polyphenol)は、日本では比較的最近、赤ワインブームとともに知られるようになった言葉です。様々な植物に含まれていて、野菜や果物の色素としての働きを持ちます。
 少し難しい話になりますが、化学的には、ベンゼン環に1個の水酸(ヒドロキシ)基(‐OH)を持つものをフェノール類、2個以上の水酸基を持つ化合物を総称して、ポリ(たくさんの)フェノールと呼びます。
 ポリフェノールには何千という種類があり、大豆に含まれるイソフラボン、ブルーベリーや赤ワイン(ブドウ)に含まれるアントシアンもポリフェノールです。ポリフェノールの仲間は、抗酸化作用や抗菌作用など、生体へのさまざまな作用を持っています。

 カテキン(catechin)はポリフェノールの一種で、フラバノールという基本構造を持つ種類に分類されます。また、カテキンは1種類ではなく複数の種類があるので、総称するときには「カテキン類」とすることがあります。チャ以外の植物にも含まれています。

フラバノール

 フラバノール(フラバン-3-オール)は、2つのベンゼン環に挟まれたピロン環に酸素(O)と水酸基(-OH)がついている構造です。複数あるカテキン類もこれを基本構造にしていて、水酸基が増えたり、ねじれてつながったりしています。

 タンニン(tannin)も、化学的にはポリフェノールの一種で、ポリフェノールのポリマー(ポリフェノールのモノマー(単量体)が複数結合してできた重合体)を指します。大きく二種類に分けられ、そのうちの一つ「縮合型タンニン」は、カテキンが酸化重合したもので、紅茶やウーロン茶に含まれるテアフラビンなどがこれに当たります。
 タンニンはまた、化学的な意味合いとは別によく使われてきました。「タンニン」と聞いて、お茶、カキ、ワインなどに含まれる「渋」を連想する方も多いでしょう。タンニンの語源は、tan(皮を鞣す(なめす)、日焼けさせる)という言葉だと言われ、もともとは、渋のように、水溶性で皮をなめす性質を持つ物質を総称したものです。植物に含まれるタンニンが動物に含まれるたんぱく質を収れんさせ、「皮」を腐りにくく、柔らかく丈夫な「革」に変える性質は、古代エジプトの時代から使われていました。

 緑茶ポリフェノール、緑茶カテキンは、種類が豊富なポリフェノールやカテキンのうち、「緑茶に含まれるポリフェノール、カテキン」と読み替えると良いでしょう。

ポリフェノール、カテキン、タンニンのどれもお茶に含まれる成分で、化学的にはちょっとずつ違う意味があるのね!