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お茶と歴史

夢広がるお茶の研究 ~お茶で人々を幸せに~

●現代のお茶の研究前線基地・静岡

 健康への関心が高まる中、お茶に含まれる成分や機能の研究が盛んになっています。お茶どころ静岡は、そうしたお茶に関する科学技術研究や産学連携が特に盛んです。国や県の試験研究機関や大学、博物館や郷土史資料館で、さまざまな分野からお茶に関する研究に取り組んでいます。これらの研究成果は、お茶の産地、産業だけでなく、広く私たちの日常生活、健康づくりや医療などにも応用されています。もっと快適で、健康な暮らしになるように、これからの研究にも期待したいですね。
 ここでは、静岡県内のさまざまな機関から、特徴のあるものをいくつかご紹介します。


○野菜茶業研究所 金谷茶業研究拠点(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
(静岡県島田市)

べにふうき

 べにふうきに含まれるメチル化カテキンが、花粉症などのアレルギー症状を軽くする!という研究成果はこの研究所から発表されました。べにふうきに関する一連の研究で、平成18年度(第57回)日本食品科学工学会論文賞などで表彰されたり、関連する特許を取得したりしています。
 お茶の産地である牧之原に立つ野菜茶業研究所は、1919(大正8)年に開設された「農商務省茶業試験場」がルーツです。お茶に関する国の試験研究機関として、育種、栽培や製茶技術、お茶の機能などの研究に取り組み、常に新しい時代の茶業をリードしています。
 毎年秋に催される研究所の一般公開では、研究成果の紹介、施設や所蔵資料の見学、呈茶サービスなどがあり、多角的にお茶にふれることができます。


○静岡県農林技術研究所 茶業研究センター(静岡県菊川市)

 栽培や製造技術の開発、お茶やその機能をいかした商品開発、農林大学校茶業分校としての人材育成を行っています。
 1908(明治41)年に静岡県立農事試験場茶業部として発足し、1937(昭和12)年に静岡県立茶業試験場となりました。


○静岡大学(静岡県静岡市)

 農学部では、茶の生産技術、茶の機能性成分などに関する研究が行われています。
 また、農業環境教育プロジェクトと題し、学生が実際に中山間地で農家の手伝いを行い、地区の方々とも交流するなかで、農業・農村についての課題や問題を見つけ、解決手法を考えるという取り組みを行っています。静岡県が進める「一社一村しずおか運動」に参加し、静岡市葵区梅が島の大代地区を応援する形でフィールドワークを進めています。


○静岡県立大学(静岡県静岡市)

静岡県立大学

 静岡県立大学は、約100年前に、杉山彦三郎氏がやぶきたを選抜したされた地域に建ちます。
 食品栄養科学部、薬学部の複数の研究室や付属機関で、お茶の成分の機能性の研究がすすめられています。1960年代からのデータで、お茶の産地にがんを患う人が少ないなどの傾向を発見し、お茶と健康の関連性について、いち早く取り組んできました。カテキン、テアニン、ギャバなどの生体への働きの解明、食品メーカーとの産学共同による飲料や菓子などの開発なども取り組まれています。
 経営情報学部ではお茶のマーケティングが研究され、お茶が持つイメージ、人々がお茶に求めることなどが報告されています。研究は、茶業者の事業展開、お茶のまちの地域活性化にも活用されています。


○静岡産業大学
(情報学部は静岡県藤枝市)

 情報学部に付属するO-CHA学研究センターがあります。「O-CHA(おちゃ)を世界共通語に」を合言葉に、お茶に関する科学のほか、文化、流通等、人文学の分野からも総合的に研究する点に特徴があります。お茶に関する学生の教育や社会人向け講座を開催して、地域産業の発展に寄与することを目指しています。
 公開シンポジウムや連続講座を開催し、学生と社会人が一緒に学べる場も用意されています。

さまざまな研究が進んで、私たちの健康や幸せな暮らしにもっとお茶を役立てられたらステキね!

●究極のお茶を目指し、茶葉と対話を続ける手揉み

 手揉みのお茶は、お茶の状態に合わせて誂えた逸品です。良い状態の芽をていねいに摘み、針のように細長く撚れた形、艶のある濃い緑色に揉み上げます。現在は、品評会や献上茶など、特別な場面用がほとんどで、滅多に市場に出回らない貴重なお茶です。手揉みはまた、機械やコンピューターによる製茶のお手本としても、その技術が大切に受け継がれています。
 今日の手揉み技術のルーツは、江戸時代の発明にあります。中国からお茶が伝えられて900年ほどたった江戸時代中期の1738年、山城(現在の京都南部)の永谷宗園氏が、蒸し煎茶の製法を発明します。それから約一世紀後の1835年に、宇治の茶師・山本嘉兵衛氏玉露の製法を考案します。玉露の製法は、煎茶製法の改良にもつながりました。
 静岡の茶手揉み技術は、1838年、伊久美村(現在の島田市伊久美)の坂本藤吉氏が、宇治の製茶師を招へいして指導を受けたのち、発展が始まります。明治時代に入ると、お茶輸出の拡大を背景に技術の普及が図られ、1905(明治38)年には、輸出用の緑茶向け製法を統一して、一層の品質向上に努めました。
 しかし、製茶機械が発明され、動力の確保もしやすくなると、手揉みによる製造は次第に減っていきます。そんな中、技術伝承のため、1959(昭和34)年、静岡県手揉製茶技術保存会が発足しました。
 静岡県内には、現在8流派が受け継がれています。それぞれの流派には、ホームグラウンドとなる産地があり、その産地の茶葉の特徴に合わせた技や加減で揉んでいきます。手揉み茶の味わいは、地域の自然と、茶師の技術が一体となって醸し出されるのです。
 かつて、お茶を摘むのは女性、製茶は男性の仕事だったこともあり、茶師といえば男性ばかりでした。ここ数年、女性も茶手揉み講習に参加して、上手に揉む人も出てきています。


○茶手揉みの手順

1. 蒸熱
蒸籠に茶葉を平らに広げ、蒸気で蒸します。葉の状態を見ながらふたをしたり、撹拌したりする。蒸し時間は30~40秒前後。蒸し終えたら籠に広げ、葉を冷やす。

2. 露切り(葉ぶるい)
蒸した葉4kg程を助炭(焙炉の上の平たい台)に乗せ、指で葉を空中から台へ振り落としながら水分を飛ばす。30~50分程度繰り返すうちに、葉や茎の水分量が減り、しわがより始める。機械の粗揉に当たる。

3. 回転揉み(転がし)
やや力を加えながら助炭の上で葉を左右に転がす工程。葉や茎の組織を壊して柔らかくしながら、中の水分を出していく。所要時間40~50分。機械の揉捻に当たる。

4. 玉解き、中あげ
回転揉みで、茶葉が絡まってできるかたまりをほどき(約5分)、葉をいったん籠に移して水分を均す(約10分)。この段階で、重量は約半分になる。

5. 中揉み
葉に撚れを付けるように、手のひらを前後に動かして揉む作業。次第に細長く、締まった形になり、色も黒緑色に変わってくる。30~40分。機械の中揉に当たる。

6. 仕上げ揉み
葉の形を整え、味や香りを決める作業。葉の乾燥が進み、表面に艶が出て、さらさらとしてくる。20~40分。機械の精揉に当たる。

7. 乾燥
助炭の上に葉を薄く広げて、乾燥を進める。時々位置や向きを変えながら、30~40分乾かす。

手揉みはお茶の真髄って印象。
すごい技の茶師が作った手揉みのお茶に憧れるわ。