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南アジア、東南アジアのお茶文化
~暑い国ではお茶も刺激的!?~

紅茶中心の南アジア、緑茶も親しまれる東南アジア

 インドスリランカなどからなる南アジアベトナムインドシナなどを含む東南アジアは、お茶の産地であり、人々の生活にもお茶が根付いている地域です。
 インド北東部のアッサム地方は、紅茶に使われるチャの品種・アッサム種の原産地です。アッサム種が南アジア各地やアフリカに運ばれ、今日ある紅茶産地の多くが形成されました。
 インドシナ半島の北部は、お茶の発祥地とされる中国南部と接しており、古くからお茶が飲まれていました。植民地時代には西洋の喫茶習慣も伝えられ、緑茶、ウーロン茶、紅茶のいずれも飲まれています。ベトナムでは、生産される15万tのお茶のうち、約45%を緑茶が占めており、緑茶の生産量は中国、日本に次ぐ多さです。インドネシアでも、14万tの生産量のうち、24%近くを緑茶が占めています。
 マレー半島のマレーシア、シンガポールは、マレー系、中国系、インド系、先住民族で構成される多民族国家。お茶の飲み方もそれぞれの文化を受け継いでおり、街なかでは多様なタイプのお茶を見ることができます。

紅茶、ウーロン茶、緑茶が作られ、飲むお茶の種類も豊富で、お茶好きには興味深い地域だわ!

ティータイムもスパイス&ハーブとともに

 南アジアと東南アジアは、歴史的にはお茶の伝播の交差点にあり、それぞれの地域の文化とも融合して、多様で個性的なお茶文化を見ることができます。多くの地域で共通するのは、自宅でも、外出先でも、頻繁にお茶を飲むこと。軒先や店にティーセットを常備していたり、お茶の屋台があったり、移動販売が頻繁に行きかう地域もあります。
 紅茶産地のインド、パキスタン、バングラデシュなどの南アジアでは、ミルクで煮出し、砂糖をたっぷり入れた紅茶が好まれています。さらに、カルダモン、クローブ、しょうが、シナモンなどの香辛料も加えたマサラ・チャイも広く飲まれています。香辛料の産地で、生活のさまざまなシーンで活用している南アジアや東南アジアでは、お茶に香辛料を使うのも自然なことです。
 ベトナムでは、ロータス・ティー(蓮茶)ジャスミン・ティーをよく見かけます。ロータス・ティーは、緑茶をベースにハスの雄しべが放つ甘くスーッとした香りを付けたもので、ベトナムのお土産としても人気です。開花直前のつぼみの中に緑茶を入れて花びらを絹糸で縛り、香りづけするのが伝統的な方法。今は、つぼみから雄しべだけをていねいに取り出し、茶葉と合わせて香りを移す方法もあります。程よい香りのためにこの工程を数回繰り返すので、100gの蓮茶をつくるのに100本以上のハスの花を使い、手間のかかった贅沢なお茶です。
 このエリアでも特に個性的なのは、タイやミャンマーの伝統的な食べるお茶でしょう。ミャンマーの言葉で「湿った茶」を意味する「ラペソー」は、蒸して揉んだ茶葉を竹筒に詰めてつくる発酵食品です。それ自体に旨味とほのかな酸味や苦みがあり、食べる前に塩やごま油で味を付け、揚げたにんにくやナッツ、干しエビなどと一緒に供されます。漬物のようにして食べるお茶は、タイや中国雲南省の一部にもあります。

暑さをしのいだり、体調や美容を考えたり、お茶も工夫して活用しているのね!

●南アジア、東南アジアで愛されるお茶の飲み方

 西アジアやアフリカと同じく、南アジア、東南アジアでも、甘くしたお茶をよく飲みます。ミルクティーは、イギリスとは違う作り方で、庶民の味になっています。南アジアに多いスパイス入りのお茶もユニークです。家庭、店ごとにスパイスの調合が変わり、また日本の健康茶に似た感覚で、季節や体調によっても調整するそうです。
 この地域で特徴的なお茶を二つ紹介します。

○インドのマサラ・チャイ

 甘く濃厚なインドのチャイは、イギリス植民地時代、良質の茶葉がイギリスへ送られた後に残る、粉のような紅茶をおいしく飲む方法として考えられたと言われます。
 鍋に水、紅茶を入れて火にかけ、たっぷりのミルク、砂糖も加えて煮立たせます。沸騰してミルク色の泡がもこもこ立ってきたら、鍋を軽くゆすったり火を弱めたりして、ふきこぼさずにしっかりと煮出すのがコツです。出来上がったら、茶漉しを通してカップに注ぎます。
 香辛料を加えたマサラ・チャイもインド庶民の味。お湯、茶葉、ミルク、砂糖を煮立たせている鍋に好みの香辛料を加え、その風味を十分に引き出してつくります。

マサラ・チャイは鍋で紅茶やスパイスの風味をしっかり煮出してつくります。

○マレーシアのテー・タレッ

 テー・タレッ(Teh tarik)は、マレーシアやシンガポールのインド系、マレー系住民に親しまれているミルクティーです。ほかのミルクティーとの違いは、コンデンスミルクを使っている点。
 濃い紅茶とコンデンスミルク、砂糖を混ぜて作るのですが、コンデンスミルクが紅茶に溶けにくいので、カフェや屋台では、二つの容器に勢いよく移しながら、泡がたつほど撹拌します。このダイナミックな動きを模して、伸ばす(tarik)お茶(teh)と呼ばれます。
 これと似た飲み物に、タイの「チャーイェン」ミャンマーの「ラペイエ」があります。チャーイェンは、紅茶をコンデンスミルクと砂糖で甘くし、オレンジ色に着色したミルクティー。ミャンマーのラペイエは、カップの底にコンデンスミルクを入れ、後から濃いめの紅茶を注いで層を作るのが定番。味のアクセントにコーヒーを加えることもあります。

テー・タレッの屋台やカフェでは、派手なパフォーマンスが目を引きます