世界へのお茶の広まり
~海も山も越えて、世界中で愛される飲み物に~
●お茶の魅力は中国から世界へ
中国が原産といわれるお茶は、どのようにして世界へ広まったのでしょうか。
およそ5000年前の中国の神話にお茶が登場します。1400年ほど前には朝鮮半島に、1200年ほど前には日本に、それぞれお茶が伝えられたとされます。ヨーロッパへは約400年前からお茶が運ばれるようになりました。
アジア諸国には、中国から仏教とともに伝えられた先進技術・文化の一つにお茶がありました。西欧諸国には、海を越えた遠い異国の珍しい産物として伝わります。
その頃のお茶は、薬として珍重されていました。お茶を飲むと眠気が吹き飛び、集中力が高まり、消化が良くなり、二日酔いが治まり、解毒になる、と。
一方で、「お茶は毒だから飲まない方が良い」という反対論も出るほどだったので、お茶の不思議な力は、当時の医薬技術や衛生環境のもとでは、驚きをもって迎えられたのかもしれませんね。
やがて、お茶はし好品となり、各地の文化に組み込まれていきます。緑茶から紅茶へとお茶の好みが変わる地域もありましたし、塩、砂糖、ミルク、スパイス、ハーブなど、他の食品をお茶に合わせる地域もありました。数々の道具類、マナーやルールが生み出され、社交の場に欠かせないものになったり、喫茶方法の流行が生まれたりしてきました。生産量の増加に伴い、階級、性別、年代を超えた多くの人々がお茶に親しめるようになっていきます。
ロシアやイギリスなどいくつかの国では、禁酒政策によってお茶の普及に拍車がかかりました。宗教的な戒律によりお酒を飲まない人々にもお茶は受け入れられました。
こうしてお茶は世界に広まり、その需要は千年を超えて増えています。
最初は薬として扱われていたお茶も、だんだんに文化の香りがする飲み物になっていったのね !
●「チャ」は世界で通じる!? 世界のお茶の呼び方
「チャ」「チャー」「チャイ」「テ」「ティー」・・・、何となく似た響きを感じませんか?これらは世界各地のお茶の呼び方です。お茶を表す言葉をじっくり見ていくと、多くの言語の「茶」は、「チャ/cha」と「テ/te」の2つのグループに分けることができます。これは、お茶の伝播のルートに理由があります。
「チャ」のグループは、朝鮮半島や日本などの東アジア、ベトナムやタイなどの東南アジア、モンゴルやチベットなど中国の内陸部、ロシア、トルコ、ギリシアなどの西アジアとその付近。ルーツは中国の広東語の「茶」の発音。中国から仏教とともにお茶が伝わり、あるいは陸路お茶が運ばれていたモンゴルやロシアとその周辺地域が「cha」を受け継ぎました。
「テ」のグループはオランダ、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国、マレーシア、スリランカなど南アジアの一部です。「テ」のルーツは中国福建省廈門(アモイ)の「茶」の発音。アモイは、ヨーロッパに初めてお茶をもたらしたオランダが、茶の輸出基地としていた港町で、ここで使われていた言葉が、経由地のジャワやヨーロッパへ受け継がれました。
■お茶の伝播と茶の呼び方