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生葉の一次加工 ~荒茶加工~

●荒茶づくりの最大の目的は葉の乾燥

左:畑で摘んだばかりの生葉
右:出来上がった荒茶(浅蒸し煎茶)

 畑から摘んだ葉を一次加工したものを荒茶(あらちゃ)と呼びます。この加工のいちばんの目的は、生葉の水分を抜くこと。そして、お茶の種類に応じた成形を行います。
 摘んだ葉は、薄い葉もあれば丸い茎の部分もあります。茎の芯まで乾燥させつつも、薄い葉の部分がぽろぽろ崩れたりしないよう、少しずつ水分を抜いていくのがコツです。これによって、茶葉においしさがぎゅっと閉じ込められ、また、保存しやすくなります。
 また、摘んだ葉を萎凋(いちょう、酸化発酵)させるかどうかは、緑茶、ウーロン茶、紅茶のどれになるかの大きな分岐点。緑茶は萎凋させないために、摘んだらすぐに荒茶工場へ運び、蒸気で蒸すか釜で蒸し炒りして酸化酵素の働きを止めます(これを殺青と呼びます)。萎凋が特徴のウーロン茶や紅茶の場合は、摘んだ葉を薄日に干したり、風に当てたりして、しおらせてから揉みます。萎凋工程は10時間以上に及ぶこともあります。
 緑茶は葉を摘んだその日のうちに荒茶に加工します。早朝から昼にかけて生葉を摘み、午後から夜にかけて荒茶加工し、深夜に翌日の準備というのが基本パターン。最盛期には24時間体制で稼働する荒茶工場もあります。

変質しなくて、旨味がぎゅっと閉じ込められたお茶になるのね

●荒茶工場の加工工程~お手本は名人の手揉み茶~

 かつて荒茶は、「茶部屋」(ちゃべや)と呼ばれる、茶農家の屋敷に併設された専用の建物や棟で作られていました。現在は、オートメーション化や衛生管理が進んだ食品加工場のような荒茶工場(あらちゃこうば)が一般的になっています。生産規模によって機械の大きさ、コンピュータ導入レベルなどは異なりますが、基本的な工程は同じです。
 機械による荒茶加工のお手本は、手揉み技術にあります。手のひらでお茶を転がしたり、団子状の塊をほぐしたりといった動作を再現するよう、部品の形や動きが工夫されています。「手」を使っていたことがわかるもう一つの特徴は、揉んでいる間の茶葉の温度が、ほぼ人肌に保たれていることです。
 コンピュータ化も進んでいますが、茶師の鋭い五感は今も欠かすことができません。自然の中で育った生葉は、毎日状態が変わります。その特徴を細かく見定め、加工中の茶葉を手に取ったり、香りをかいだりして、加工時間、温度、圧力などの微調整を行います。

 

○煎茶の加工工程

. 搬入 . 蒸し. 冷却 . 粗揉. 捻. 中揉 . 精揉 . 乾燥. 合組・包装

集められた生葉

1. 搬入:生葉の受け入れ・コンテナ

荒茶工場の入り口です。
重量と品質を確認して生葉用のコンテナへ移します。

2. 蒸熱(蒸し機)

生葉を蒸気で蒸して、酸化発酵を止めます。
ここでは茶葉の温度が100℃近くまで上がります。 蒸す時間は、浅蒸しで20~50秒、深蒸しで60~120秒など、お茶の種類によって異なります。ちょっとした蒸し具合の違いも、その後のお茶のできあがりに大きく影響します。

3. 冷却(冷却機)

蒸した葉を冷まし、表面の水分をとります。葉の温度が34~36℃ぐらいに下がり、変色も防ぎます。この後、中揉の工程まで茶葉の温度は人肌です。

蒸して冷却した後、しっとりしたお茶の葉 蒸して冷却した後、しっとりしたお茶の葉

4. 粗揉(そじゅう)(粗揉機)

熱風を当てながら葉を揉み、水分を出していきます。(95℃・40分)
筒状の粗揉機の中で、手を広げたような形のフォークと波型の内壁を使い、茶葉を軽く揉みます。

粗く揉まれたお茶の葉

揉捻機で揉まれる茶葉

5. 揉捻(じゅうねん)(揉捻機)

葉に力を加えながら揉み、葉や茎などの水分を均一にします(常温・25~50分)
ここでは、揉む工程の中で唯一、熱を加えずに行います。渦巻模様の台の上を、お椀を伏せたような機械がまわるうちに、葉に「よれ」がつきはじめます。

6. 中揉(ちゅうじゅう)(中揉機)

熱風を当てながら葉をもみ、乾かします(排気温度36℃・35分)
葉はさらにもみこまれ、よれがはっきりしてきます。この段階で、重さや水分は生葉の3分の1程にまで減ります。

絡まりがなくなり、次第に細く乾いてくるお茶の葉

精揉機

7. 精揉(せいじゅう)(精揉機)

熱した板の上で、葉に力を加えながら往復運動をし、形を整えつつ乾燥します(100℃・50分)
茶葉は針のように細く締まった形で乾燥し、固くなります。上質なお茶は、この段階で濃く、艶のある色をしています。

細く、固く乾いた茶葉

8. 乾燥(かんそう)(乾燥機)

保存に適した水分になるよう、熱風で十分乾かします(90℃・25分)
重さは生葉の23%程度、水分5%前後の、すらっとした茶葉となります。

9. 合組(ごうぐみ)・包装

出来上がった荒茶を大きなタンクのような合組機に入れて、均一になるように混ぜ合わせます。出来上がった茶葉は、大海(だいかい)と呼ばれる大きな袋に入れられ、出荷を待ちます。

 蒸しから乾燥まで、およそ約4時間かけて「荒茶」ができあがりました。緑茶は、畑で葉を摘んだその日のうちにここまで行います。

茶葉の形や硬さがだんだん変わっていって、
理科の実験を見ているみたい