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知る・学ぶ

チャの木とは
~植物的な特徴と人への恵み~

●チャのルーツと生育エリア

○チャの種別

チャの花

チャは、ツバキ科の植物で、永年性の常緑樹です。

*植物学の専門的な分類は、【被子植物門(Magnoliophyta) ー 双子葉植物綱 (Magnoliopsida) ー ツバキ目(Theales) ー ツバキ科(Theaceae)】

つばきの花

 チャは、学名をCamellia sinensis(カメリア シネンシス)と言い、国際的にCamellia sinensis (L.) O.Kuntzeと表記されています。Camelliaは属名、sinensisは種小名、「O.Kuntze」は1887年に現在の学名Camellia sinensisを命名したドイツの植物学者クンツの名前を指しています。
 ツバキ科の植物で、茶のほかに日本で有名なものに、ツバキやサザンカがあります。を見比べると、共通点を見つけることができます。

 クンツが命名するまでは、紅茶をつくる木と緑茶をつくる木は別種だと考えられるなど、長い間学者たちの議論が続いていました。それは、紅茶をつくる木は樹高が高く、葉が大きいのに対し、緑茶をつくる木は明らかに小ぶりで葉が小さいといった差異があったからです。

 現在は、紅茶も緑茶も種は同じcamellia sinensisで、その下位の細分類として、中国種(Camellia Sinensis var. sinensis)、アッサム種(Camellia Sinensis var. assamica)、中国大葉種(Camellia Sinensis f.macrophylla)などと分類する考えが定着しています。

※var.は「変種」、f.は「品種」、macrophylla は「大きな葉の」という意味)


○チャの分布

 Camellia属は、世界で80種以上が確認されていますが、チャの木はその中でも最も広い分布を持つ植物です。
 世界最古のお茶の専門書『茶経』には「茶は南方の嘉木」とあり、中国南部が原産地とされていますが、科学的な解明はまだのようです。
 チャは、古くからその価値が認められていたこともあり、南アジア、東南アジア、日本などへ、人の手によって積極的に広められてきました。

 東西交易の発展は、茶の需要を伸ばし、各地に新たな茶園開拓を促しました。今日チャは、北は日本やロシア南部、南はアフリカ南部、オーストラリア大陸や南米でも栽培されています。

チャの木とツバキやサザンカはいわば親類。チャの木には細かい種類があって、世界各地に適応しているのね!

●日本で育つチャの木の特徴

○生育に適した環境

 チャはもともと亜熱帯性植物で、温暖で雨の多いところを好みます。また、温帯、熱帯の高地でも適するところがあり、世界各地に栽培されています。
 日本でのチャの生育に適した気候は、これまでの研究で、年間の平均気温が13℃前後降水量が1,500㎜以上です。特に、成長時期に当たる4月から10月の間の降水量が多いのが望まれます。一方、適さないとされるのは、最低気温が氷点下5度以下になることが多かったり、最高気温が40℃を超えたりする地域、雪解けが遅い地域などです。
 土壌はやや酸性通気性があり、1メートルほどの深さまで根が張れる土質が好まれます。

山間地の茶園(静岡県川根本町)

平坦地の茶園(静岡県牧之原市)

 しかし、京都の山間部、福岡の八女、静岡の天竜、川根、本山などの伝統的な茶産地の多くは、適地の条件よりもやや冷涼な地域です。標高が高く、冬はしばしば雪が降ったり、霜が降りたりしますし、山あいのために日照が限られ、寒暖の差が激しく、霧に覆われることもよくあります。こうした環境では、木の成長はゆっくりで収量も少なくなります。その代わりに旨味と独特の香気を蓄え、これが良い品質だと評価されてきました。

 現在は、植物本来の適地である温暖な土地での茶園が増えています。これは、元気良く成長した茶葉を現代人好みの味わいへ加工する「深蒸し」の技術、土壌改良灌がい技術などの開発・発展により、生産効率の良い温暖な平坦地が好まれるようになったことにあります。


○畑のチャの木クローズアップ

小さな苗が並ぶ幼木園

幼木

茶園の多くは、小さな苗を植えるところから始まります。苗を植えてからしばらくは木を定着させ、育てることに集中します。定植後3ごろから、少しずつ摘採が始まります。

幹、枝

茶園では、枝を増やし、たくさんの葉が伸びるようにせん枝をします。5年、10年とたつにつれ、次第に枝数が増え、うねの形が整ってきます。

畝を横から見たところ

摘採後に刈り落とされた茶樹

霜かぶりと出始めの新芽

萌芽

まだ春になりきらない頃、枝と葉の付け根から新しい芽が伸び始めます。最初は「霜かぶり」とも呼ばれるやや固い殻が、柔らかい新芽を寒さから守ります。

新芽

左:摘採適期の新芽
右:凍霜害にあった新芽

新芽

気温の上昇とともに伸びる新芽は、最初は柔らかく、淡い色合いで産毛をまとい、「みる芽」と呼ばれます。次の芽が伸びるとともに、先に出た芽は大きくなり、色味を増し、ハリのある葉に成長します。一番茶では、葉が4~5枚開いたころに、一芯二葉、あるいは三葉を摘むのが良いとされています。
芽が出てから遅霜にあうと、芽が茶色く壊死し、その部分の成長が止まってしまいます。

チャの花

秋になると、ツバキより小ぶりの白い花が咲きます。品種により、ピンクがかったり、花弁の数が多かったりします。かわいらしく、甘い香りのする花ですが、葉の摘採を目的とする茶園では、できるだけ花を咲かせないようにしています。

茶の実遊び

実(種)

チャの実(種)は、ビー玉よりやや小ぶりな大きさをしています。1個から3個の種が殻に包まれ、育ちます。茶園で足元を見れば、落ちたチャの実を見つけることができるでしょう。
日本では、チャの種から木を増やすことはほとんどありません。昔は、チャから油を搾ったり、子どもの遊びに使われたりしました。

掘り出されたチャの根

茶樹は数十年を経て樹勢が衰えるころ、新しい木に植え替えられます。チャの木の根は深く、密に張り巡らされており、なかなか抜けません。生命力が強く、根が地中に残っていると、新しい芽が出てくることがあります。